なぜ硬化剤が必要?
アクリルポリオール(主剤)は、それだけでは乾燥しても「熱可塑性」のまま、つまり温めれば柔らかくなり溶剤で溶けてしまいます。ここにイソシアネート系の硬化剤を加えて反応させると、分子同士が架橋(クロスリンク)して立体的な網目構造ができ、耐溶剤性・耐熱性・耐傷性が飛躍的に向上します。
OH基とNCO基の反応
アクリルポリオールの水酸基(-OH)と、イソシアネート硬化剤のイソシアネート基(-NCO)が1対1で反応してウレタン結合(-NHCOO-)を作ります。
-OH + -NCO → -NH-CO-O-
水酸基 + イソシアネート基 → ウレタン結合
このため、硬化剤の量は「OH基とNCO基が何対何で反応するか」から計算します。
水酸基価(OH価)とは?
ポリオール1gの中にどれだけOH基があるかを示す指標です。「1gのポリオール中のOH基を中和するのに必要なKOH(水酸化カリウム)のmg数」で表します。単位は mgKOH/g です。
OH価が大きい → OH基が多い → 硬化剤がたくさん必要
OH価が小さい → OH基が少ない → 硬化剤は少量でOK
NCO含有量(NCO%)とは?
硬化剤100g中にNCO基が何g含まれているかを示します。NCO基の分子量は42 g/molです。
NCO%が高い → 少量の硬化剤で多くのNCO基を供給できる
NCO%が低い → 多くの硬化剤が必要
計算式の導出
主剤 Wp [g] 中のOH基モル数:
OH基モル数 = Wp × OHv / 56,100
(OHv: OH価 [mgKOH/g]、KOH分子量 = 56.1 g/mol = 56,100 mg/mol)
硬化剤 Wh [g] 中のNCO基モル数:
NCO基モル数 = Wh × (NCO% / 100) / 42
(NCO分子量 = 42 g/mol)
NCO/OH比 = R で反応させるとき:
Wh = R × Wp × OHv × 42 / (NCO% / 100 × 56,100)
= R × Wp × OHv × 4,200 / (NCO% × 56,100)
主剤100部あたりでは:
硬化剤 [部] ≈ 7.487 × R × OHv / NCO%
NCO/OH比(当量比)とは?
- NCO/OH = 1.0(等量): OH基とNCO基が過不足なく反応。計算の基本
- NCO/OH > 1.0(NCO過剰): 余ったNCO基同士が反応して架橋密度が上がる。実用では1.5〜3.0当量が多い
- NCO/OH < 1.0(OH過剰): 未反応OH基が残り架橋不足になりやすい
ワニス(バインダー溶液)の場合
ポリオールは通常、溶剤に溶かしたワニスとして供給されます。ワニスのOH価は純ポリオールのOH価と固形分率から計算できます。このツールでは「ポリオール純品OH価 × 含有率」の自動計算にも対応しています。
イソシアネート硬化剤の種類
硬化剤は「ジイソシアネートの種類」と「変性形態」の組み合わせで分類されます。
ジイソシアネートの種類:
・HDI(ヘキサメチレンジイソシアネート): 脂肪族。耐候性◎、黄変しにくい。汎用硬化剤の主流
・XDI(キシリレンジイソシアネート): 脂環式。反応性が高く硬化が速い。高硬度
・TDI(トルエンジイソシアネート): 芳香族。安価だが黄変しやすい。屋内用途向き
変性形態(モノマーの多官能化方法):
・アダクト体(TMP付加体): トリメチロールプロパンにジイソシアネートを3分子付加。3官能。粘度が比較的高い
・ビウレット体: 水とNCO基の反応で生成する3官能体。アダクトより低粘度の傾向
・イソシアヌレート体(ヌレート体): NCO基3分子が環化した6員環構造。3官能。熱安定性が高い。硬度が出やすい
プリセットのNCO%値について:
このツールに内蔵しているNCO%値は各タイプの代表的な値です。実際の製品はメーカー・グレードによって異なります。正確な配合計算には、必ず使用する製品のカタログ(TDS)記載のNCO%を確認してください。